イノベーションや稼ぐ力に密接に影響する多様性。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)における多様性とは。

2023/02/12

昨今、世界的に持続可能な社会の実現へ向けて様々な取り組みが行われている中で、注目を集めている「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」。今回はこの中で特にダイバーシティ(多様性)の重要性について、いくつかの調査結果を引用しながら解説していきます。

ダイバーシティ(多様性)とは

ダイバーシティとは、ある集団において、年齢や性別、国籍や民族性など多様な人が集まった状態のことを意味します。昨今は多様性に関する種々の研究や調査が活発に行われており、組織の生産性や競争力、イノベーションの活性化へ好影響を及ぼすことが明らかになってきています。SDGsが持つ17個のゴールにも、5:ジェンダー平等を実現しよう、10:人や国の不平等をなくそう、とあることも背景に、日本企業においても多様性に対する取り組みを活発に推進しようという動きが見られますが、実態は海外と比べて日本は大きく遅れを取っている現状があります。

社会構造から鑑みて、世界と比較しても日本は言語・人種的な多様性はそれほど高くなく、ジェンダー平等に対する多様性も著しく低い状態です。実際に、世界経済フォーラムが公表している「ジェンダーギャップ指数2021」によると、調査対象となった153カ国のうち日本は121位と、特に低い結果となっています。日本の女性管理職の比率は14.7%と先進7カ国でみると最も低く、最も高いのはアメリカで39.7%、イギリスが36.5%と続いており、やはり欧米と比較した時に日本は多様性に劣ってしまう結果になります。

ダイバーシティがイノベーションを活発にするのでは

多様性に関する種々の調査の中で、「ダイバーシティはイノベーションを活発にする」といった研究・発表が注目されています。Innovation: Manabement, Policy & Practiceに掲載された研究結果によると、スペインの4,277社の研究開発チームにおいて、性別の多様性レベルを統計モデルを使用して分析した結果、女性の数が多い企業は、2年間で革新的なイノベーションを市場に導入する可能性が高いことを明らかにしています。

Economic Geographyに掲載された別の研究では、文化的多様性がイノベーションに好影響を与えるとの結論を発表しています。根拠として、ロンドンの企業7615社を対象に実施したアンケートにおいて、文化的に多様性のあるチームがリーダーシップを持ってビジネスを推進している企業は、多様性のない均一なリーダシップの組織・企業と比較した時に、新製品を市場に投入している機会が多いことが明らかになっています。

GAFAMに代表されるように、ここ10数年で特に注目されてきたイノベーションの多くは日本ではない企業によって生み出されてきました。世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「グローバル・イノベーション・インデックス」によると、日本は13位という結果となっており、1位のスイスや2位のアメリカ、4位イギリスなどの欧米諸国から大きく離された結果であり、6位の韓国や11位の中国よりも下位に位置する結果となっています。

多様性のある企業が得る金銭的リターン

マッキンゼーが366社を対象に行なった調査では、マネジメント層に文化的多様性のある人物がいるほうが、そうでない組織よりも、35%以上の財務的利益を得ており、ジェンダー平等が浸透している企業はそうでない企業よりも15%以上の財務的利益を獲得しているとの結果を得ています。また、クレディスイスがグローバル規模での2,400社を対象とした調査結果では、取締役に少なくとも1人の女性がいる場合、そうでない組織よりも高い自己資本利益率と純利益を上げているとの事実が確認されています。

日本では、バブル崩壊後からこれまでの30年間を「失われた30年」と表現されていますが、この間に様々な世の中の常識が変化を遂げてきました。大量生産・大量消費を前提とした経済モデルが今や持続的可能性を追求した経済活動を主眼としたものに変わりつつあったり、紙で行われていたあらゆる手続きがデジタル上でのやり取りをベースとした仕組みに変わったりと、環境変化とテクノロジーの進化を敏感に感じながら企業はイノベーションを生み出し、人々の生活を変化させ続けてきました。アメリカは世界から様々な移民が集まって出来た国であり、潜在的に多様性の力を備えていたのが、昨今はその効果をより発揮できる社会環境へと形を変えつつあります。EUでは国同士が地続きで繋がっていることを利点とした協力的な経済圏を築き上げていく中で、多様なバックグラウンドの混在を前提とする生活が常識となっています。昨今の環境変化の激しい現代において、社会構造の違いから発生する柔軟性・多様性の多寡が、企業の成長に影響を及ぼしている要因の一つでもあると言えるのではないでしょうか。

多様性に含まれる世界や日本の現状を知り、成長へと還元する

多様性は、言語や人種だけではなく、LGBTQや個々人の発達に関する領域についても内含される言葉です。もっと言うと、「誰もが自分らしく生きていける社会」へ取り組むにおいて、「多様性」に含まれる世界・日本の現状を適切に知っていくことが何よりも重要です。また、こういった知識を知っていくことで、アンコンシャス・バイアス(潜在的な偏見)に対する気づきを与えていくことにも繋がります。昨今は日本企業でのDE&Iへの取り組みが活発化してきているため、これらの取り組みが教育機関や世の中へと良い影響を与えていくことが期待されます。

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