日本と欧米におけるATS活用の違いから読み取る採用動向。「求人票」と「スキル」のキーワード化が鍵

2023/01/13
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中途領域における人材獲得競争が激化。コロナを契機とした大離職時代

企業の人材獲得競争が激しさを増す昨今、人事業務における工数も増加傾向にあります。2020年、コロナ感染が世界的に急速な勢いで広がり、未曾有の事態の中で経済は急降下しました。ウィルスという見えない存在を相手とした生活を送ることを強いられた結果、世の中は大転換期を迎え、人との接触を行わないことを前提としたビジネス活動、在宅ワークやテキストコミュニケーションを行う機会は劇的に増えました。あらゆる企業はDXやデジタル化を掲げ、新たな時代に対応し生き残りをかけた戦いを始めました。ウィズコロナ下での生活に人々が慣れ始めた2021年以降は、経済活動は急回復の様相を見せ始め、エッセンシャルワーカーやIT人材などを中心とした人材獲得競争が激化するようになりました。

このような動きの中で、アメリカでは ”The Great Resignation(大離職時代)”と呼ばれる社会現象が起きています。同国の労働統計局が公表している”Job Openings and Labor Turnover Survey;JOLTS(求人労働調査)”では、自己都合で会社を退職した労働者の数は2021年11月に過去最高の450万人を記録して以降、400万人以上の離職数となるほどの高水準が続いています。また、2022年3月にマイクロソフト社が公表した、31カ国・3.1万人の労働者を対象とした働き方に関する調査「2022 Work Trend Index」では、世界の労働者の43%が翌年に転職を検討する可能性があることを伝えており、特にZ世代とミレニアル世代をあわせると半数以上(52%)が転職を考えていたとの結果が発表されています。

日本でも経済回復を背景に人材獲得競争が激化。人材流動性も急上昇していく傾向

日本では記録的な円安や原油高の影響により、世界の先進国と比べて経済回復のスピードは停滞していましたが、徐々に円の値段は落ち着きを見せ始め、原油高への対応も始まりつつある中で、経済回復の傾向が見え始めています。2023年1月にリクルート社が発表した「2023年転職市場の展望」によると、約8割の企業は中途採用計画に対して未充足である状態となっており、企業の採用熱は高まりを見せています。一方で、2022年1月に発表されているJob総研の調査「2022年 転職意識調査」では、5割の人が現時点で転職を検討しているとの回答となっています。企業の中途採用熱の高まりと共に、転職検討者の数も増えていく傾向が見られ、2023年は更に人材の流動性が高くなっていくと予想できます。

人材採用の工数削減と生産性向上が喫緊の課題。ATS活用で解決の糸口を

人材獲得競争は熾烈を極める中で、企業はいかに少ない工数で良い成果を出していくかが重要となりますが、採用活動における生産性を上げていくうえでATSの活用は必要不可欠であると言えます。ATSは”Applicant Tracking System”の略語であり、日本では採用管理システムと呼ばれています。主には採用業務の工数削減や業務効率化を目的として導入することが多く、①応募・求人管理、②候補者・個人情報管理、③選考進捗管理、④内定者管理を一括して一つのツールで行えるようになるというメリットがあります。

日本と欧米におけるATS活用方法の違い

日本でのATS活用は、主には求人票管理や応募者管理、選考データの分析ツールとして使われることが多く、書類選考や面接評価は属人的な手法で行っているケースがほとんどです。一方で、欧米におけるATS活用は、上述した管理・分析ツールとしての活用に加え、レジュメスクリーニングツールとして扱っている企業も数多くあります。実際に、アメリカの人材会社”Preptel”の調査では、75%のレジュメが人間の目を通らずに評価が終わっている状態であることを示唆しています。また、アメリカでレジュメチェックを行うテクノロジーを開発している企業”Jobscan”の調査データによれば、Fortune500に属する95%以上の企業はATSを活用しており、レジュメスクリーニングの機能も同様に活用している実態があると発表されています。

そのため、欧米企業に対して職務経歴書、いわゆるレジュメを送る際は、人間の目ではなくソフトウェアによるスクリーニング審査が行われることを前提としたフォーマットを準備・作成する必要があります。ある調査では、1,000個のレジュメを分析した結果、ATSによるスクリーニングを行う上で不適切なフォーマットとなっているレジュメが43%もあったという結果になり、それらの不適切なレジュメは人間の審査が行われないままに不合格と判定されるケースが見られました。きれいにデザインされたドキュメントなどではなく、Wordファイルで作られたシンプルなPDFとするフォーマットでないと、ATSでのレジュメスクリーニングは機能しないという事実を、候補者側も確認しておく必要があります。

キーワードベースでのスキルマッチングが今後の人材採用における鍵

ATSが読み取れるフォーマットで準備することを理解した上で、企業はどのようにレジュメの合否判定を行っていくのでしょうか。その答えは「キーワードのマッチング度合い」にあります。アメリカではジョブ型雇用が中心であるため、求人を出す際はかなり明確なジョブディスクリプション(求人票)が用意されています。そのため、そのポジションに適合する人材要件はキーワードベースで定義されており、応募書類の中に同様のキーワードが一定以上の割合で出現していないと、応募要件に達していないと判断するような仕組みになっています。応募者側は応募するポジションで必要とされるキーワードを自身のレジュメに盛り込んで記載しておくことが必要です。

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スキルベース・キーワードベースの採用活動に取り組むべき理由
https://company.prorec.biz/column/307/
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日本企業では欧米企業のように(ATSでのレジュメスクリーニング機能のように)、人間の目を通さないソフトウェアによるドラスティックなキーワードベースの書類選考は未だ行われている事例は見られていないため、今後の動向は注目されます。

日本企業がすでに実践しているキーワードベースの採用活動

ここで注意したいのは、日本においてもキーワードベースの採用活動はすでに実施されているという事実です。確かに、ソフトウェアによる書類スクリーニングは欧米企業のようには取り組まれていませんが、ダイレクトリクルーティングを導入している企業はすでにソフトウェアによるキーワード選定を行っています。ビズリーチやGreenなどのスカウトツールを運用している企業は、自社が求める採用ターゲットを要件化・キーワード化した上で候補者探しを行い、要件に当てはまるスカウト対象者をピックアップしているため、この時点ですでに採用キーワードに引っかからない求職者は企業の採用網から外れていることになります。

つまり、ダイレクトリクルーティングを活用している企業は、すでにキーワードベースの採用活動を行っているため、書類選考もキーワードベースでスクリーニングを行っていく下準備はできている状態であるとも言えます。こういった事実から鑑みると、近い将来、日本企業においても生産性向上のお題目の中でソフトウェアによる書類スクリーニングを活用する企業も増えてきてもおかしくありません。転職を検討している人は、自身の職務経歴書やレジュメを記載する上で、今の時点から自身が持つスキルをキーワードベースで書き出しておくと良いかもしれません。

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Amazonが実施するソフトウェア活用による採用手法”Best fit”
https://company.prorec.biz/column/294/
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