HR領域に潜む無意識下のバイアス(偏見)による危険性

2023/01/28
  • CX

欧米ではHRテックを用いたキーワードベースの採用活動が主流になっている昨今、日本においても、特に中途採用領域ではすでにキーワードベースの採用活動は行われ始めています。これらの採用活動において、候補者側が注意したいのは、レジュメが人間の目で確認されないまま、自身が対象外になってしまうことです。逆に、企業側は本来であれば有力な候補者になりうるにも関わらず、目で確認しないままソフトウェアによって落としてしまっている可能性に留意する必要があります。

ハーバードビジネススクールによるリサーチによれば、本来ある企業において有力な候補者となる人物が、AIを活用したHRオートメーションツールによって対象から外されるという結果を引き起こしている事例が多々発生しており、それは、特定のバックグラウンドや性別、民族性などのバイアス(偏見)によって招いてしまっている可能性があると指摘しています。

AIを活用したサービスを使用するということは、AIを機能させるための大量のデータセットを活用したアルゴリズムを用いており、それらの元データを学習させるための開発を行っており、元データとして扱う内容にも人の判断が加わっています。そのため、それらのプロセスに携わる人間が持っているアンコンシャンシャス(無意識な状態)なバイアスが、AIによるアウトプットに何らかの影響を与えている可能性が指摘されています。

ニューヨークを本拠地として世界40カ国・180年にわたって事業を展開するアメリカのコンサルティング会社Mercerのレポートによると、88%の企業は何らかの形でHRにAIを導入しているとされていますが、HR領域でのAI活用において、レジュメスコアリングやスクリーニング機能は一つの代表的な活用法となります。前述したように、アルゴリズムが何らかのバイアスの上に成り立ったシステムとなっている場合は、本来自社にとっては有力な候補者であるはずにも関わらず、人間の目に触れないままに選考から漏れてしまっている自体が起きます。

また、日本ではAIシステムによるレジュメスクリーニング・スコアリングを活用している例はまだ多くは見られませんが、ダイレクトリクルーティングを行う際に学位や職務経験、キーワードによる検索を行い自社とマッチングしそうな候補者を探していく際には注意が必要です。例えば、職務経歴で1年以上の空白がある候補者は対象外とする検索条件を設けた場合において、その空白期間が妊娠や家族の介護などの理由が原因であることも考えられますが、システムはいかなる理由を考慮することもなく機械的に対象外となってしまっています。

AIバイアスに対するトレーニング

時を追う毎に激しくなる人材獲得競争に比例して、人材の流動性も高くなっている昨今、HR領域では社員の定着性や組織に対するエンゲージメント(従属性)についても重要視され始めています。アメリカでは大離職時代(The Great Resignation)と呼ばれるほど人材の流動性が高くなっている中、従業員が仕事に対してモチベーションを持って仕事に取り組んでいる割合は全体で32%程度であるという驚くべき数字も公表されています。人材獲得だけでなく、人材定着、エンゲージメントや生産性など、HR領域でのAI関連サービス、AI活用法は今後もどんどん出てくると思います。

そのような中で、前述したようなバイアスを克服していくことは極めて重要です。そのためには、AI アルゴリズムの設計、開発、使用に携わるすべての人 (雇用主、人事部門、IT スペシャリストなど) に対する研修・トレーニングを行い、アンコンシャスなバイアスの存在を認知させることが必要不可欠です。特に採用においては、AIによるアウトプットを分析し、対象となる候補者だけでなく、対象外となった候補者の評価にバイアスを含めた判断・理由が存在しないかということを検証していく必要があります。例えば、アルゴリズムが人種を評価対象としない設計となっていた場合であったっとしても、人の名前に応じて間接的にネガティブな判断を下していないかどうかを検証するなどです。

多様性に対する対応

昨今は、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を前提とした社会活動に対する重要性が意識される中で、表面的な対応や取り組みだけでなく、その裏側で働いているシステムや仕組みも見直すべきであることは示唆しています。また、そういった事態に対応していくための組織を構成すること、評価をしていくことは極めて重要です。

データに基づいて有効な意思決定を行うためには、バイアスを排除するための一定の基準を満たしたデータセットを用意する必要があります。昨今のデジタル社会では、自社だけなく豊富かつ多様なサードパーティ製のデータセット・ソースを活用することもできます。それらの選定基準を設け、適切に活用していくこともHRの重要な役割となります。

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