生成AIでスカウト採用が変わる。最大18倍の効率化を実現。独自AIツールを開発するプロリクが実践するスカウト業務の新常識
2025/05/27
スカウト採用にかかる膨大な工数
各プロセスに存在する業務負荷
スカウト採用は、エンジニアやハイクラス人材など“応募を待っていても来ない”職種において、企業側が攻めに出るための有効な手段です。
一方で、「スカウトを送る」にはいくつもの業務プロセスが存在し、しかもそれぞれが高い工数を要するという現実があります。
スカウト採用のプロセスと工数
私たちが実際に支援してきた企業の事例やスカウト代行実績から見えてきた、スカウト採用における主なな工程は以下の通りです。
① 媒体の選定
まず最初のステップは、どのスカウト媒体を使うかを選ぶところから始まります。
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自社の求める「職種」や「レベル感」に応じて、複数ある媒体の中から最適なものを見極める必要があります。
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たとえば、ターゲット候補者のデータベースや媒体のスカウト返信率、コストなどを比較検討するため、複数媒体における調査が求められます。
② 求人・スカウト文の作成
次に取り組むのが、「どんな求人文・スカウトメッセージを出すか」の設計です。
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どんな情報を、どんな訴求で伝えればターゲットに刺さるのか?
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ターゲットに対して訴求性が高いスカウト文を作成という上で、ターゲット理解とライティングスキルの両方が求められます。
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メッセージの文体や訴求一つで、返信率が大きく変わるため、テストと改善も必要です。
③ 候補者のピックアップ(=最も工数がかかる工程)
私たちの経験上、スカウト業務全体の中で最も時間と労力がかかるのがこの工程です。
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媒体上での検索条件設計に始まり、表示された候補者一人ひとりのレジュメや職務経歴を丁寧に読み込んでいきます。
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ピックアップには、その職種に対する深い理解が欠かせません。どのスキルが本当に求めているものなのか、キャリアのどの部分に着目すべきか——これらを見極める目を持つ必要があります。
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特にエンジニアや専門職では、職種や技術への理解不足が原因で、的外れなスカウトをしてしまうリスクもあります。
④ スカウト送付
ようやく、候補者にメッセージを送る段階に到達します。
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1to1のパーソナライズされたメッセージを作成します。1to1メッセージは、候補者の経歴や志向に合わせて調整する必要があります。
工数の内訳と実際の比率|6割以上がピックアップ作業に集中
私たちがこれまで手がけてきたスカウト代行プロジェクトの分析からは、スカウト業務全体の中でも約60%以上の工数が「候補者ピックアップ(検索+目検)」にかかっているという結果が出ています。
この工程は属人性も高く、精度と効率の両立が非常に難しい領域です。だからこそ、「工数がかかる=クオリティの高い候補者に出会える」とは限らないのがスカウト採用の難しさでもあります。
なぜ今、スカウト採用に生成AIが必要なのか
生成AIの導入がスカウト業務をどう変えたか
スカウト代行支援を手がける中で、業務の一部に独自開発のAIツールを導入しています。AIツールにより、特に工数が集中していた「候補者ピックアップ工程」において、圧倒的な業務効率の改善を実現しました。
また、ChatGPTなどの汎用的な生成AIツールにおいても、十分な業務補完効果があることが実証されています。たとえば以下のような活用が可能です:
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媒体選定のためのデータ整理・比較シナリオの自動作成
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職種・スキルの特徴把握と検索条件の設計
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候補者に響くスカウト文の作成
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経歴ベースの個別1to1メッセージの生成 など
つまり、生成AIはスカウト業務の単なる“効率化ツール”に留まらず、業務プロセスそのものの構造を変える存在になっています。
効果は数値で証明されている|スカウト送信1件あたりの工数が大幅削減(4倍〜最大18倍の効率化倍率)
以下は、私たちが実際に支援したクライアント企業での生成AI導入前後の比較データです。
医療系スタートアップでは、1通あたり30分程度かかっていた送付が1通あたり1.6分まで効率化しました。
職種 | 企業タイプ | 導入前 | 導入後 | 効率化倍率 |
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Webエンジニア | 医療系スタートアップ | 30分/通 | 1.6分/通 | 約18倍 |
フィールドセールス | 人材系ベンチャー | 8分/通 | 2分/通 | 約4倍 |
Webエンジニア | 受託開発企業 | 8分/通 | 2分/通 | 約4倍 |
これらの成果は、「1to1メッセージを作成し、送信するまでに要する時間」を計測したものであり、単なる事務的効率ではなく“成果を出すアウトプット”の生成スピードが向上しています。
一度使えば戻れない、「AI前提のスカウト活動」
生成AIをスカウト業務に本格導入して以降、はっきりと実感しているのは——もはや人力だけに依存したスカウト活動には戻れない、ということです。
生成AIの導入により、工数の大幅な削減だけでなく、メッセージの質や候補者選定の精度までもが飛躍的に向上しました。
一度AIを業務に組み込むと、手作業のみで行っていた頃の非効率さや限界が明確に見えてきます。
スカウト活動の現場では今、「AIを使いこなすこと」が前提条件になりつつあります。これは一過性の流行ではなく、採用業務の生産性と成果を飛躍的に高める手段として、不可逆な変化です。AIの性能や活用ノウハウが進化する中で、人間が担うべき判断や戦略設計により多くの時間を割けるようになったのは、スカウト業務全体のあり方を再定義する大きな転換点といえます。
生成AIは単なる業務効率化ツールではなく、スカウト業務の基盤そのものを変えるものとして、採用支援に欠かせないものとなっています。
スカウト業務を支える、生成AI活用の実践例
媒体選定から効果検証まで、あらゆるプロセスを効率化する生成AI
生成AIがスカウト業務に不可欠な存在となりつつある今、実際の業務の中で「どこまで」「どうやって」活用できるのか——この点について、現場での活用ノウハウをご紹介します。
私たちプロリクでは、単なるツール導入にとどまらず、生成AIを業務プロセスのあらゆる工程に組み込み、“人とAIのハイブリッド体制”を確立しています。以下では、各プロセスにおける活用例を実務目線で詳しく解説します。
1. 媒体選定:データドリブンな意思決定をAIで実現
求人広告やスカウト媒体はそれぞれ特性が異なるため、「どの媒体を使うべきか?」という問いに対する答えは、一律ではありません。
ここで私たちは、ChatGPTに媒体ごとの数値データ(例:アクティブユーザー数、CVR、掲載料金など)を読み込ませ、目的(応募数最大化/面談数増加など)に応じた合理的な媒体選定を行っています。
2. 求人・スカウト文作成:AIとの対話でアウトラインを構築
AIを活用することで、スカウト文や求人票の作成にかかる時間を大幅に短縮できます。
たとえば、以下のようなスカウト文に記載したい情報をプロンプトに含めます。
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職種名とその業務内容
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配属チームの構成や開発スタイル
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会社のカルチャーやビジョン
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働き方(リモート可否など)
このような詳細を踏まえたプロンプトを複数回繰り返すことで、“芯のある文章”のアウトラインが整い、あとは人の手で文体や細部を整えるだけという状態まで仕上げることができます。
3. 候補者ピックアップ:検索条件設計と表記ゆれのカバー
スカウト媒体で候補者を検索する際、「キーワード設計」の巧拙がリストの質を大きく左右します。
たとえば「UXデザイナー」を検索したい場合、実際のレジュメ上には「UI/UX」「インタラクションデザイナー」「デザインストラテジスト」など、さまざまな表記ゆれが存在します。
そこで、生成AIを使って「関連する類義語・業界用語を抽出」し、検索ワードに網羅的に組み込むことで、取りこぼしを最小限に抑えた高精度なピックアップが可能になります。
4. 個別スカウト文作成:1to1メッセージの生成
候補者一人ひとりの経歴に応じたスカウトメッセージを作成する際も、AIを活用できます。以下の情報を与えると効果的です。
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候補者のレジュメ情報
- 求人要件や自社の魅力、特徴
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メッセージ例やメッセージの雛形
これらの情報を与えることで、短時間で“刺さる1to1メッセージ”が完成します。
まとめ|生成AIは、スカウト業務における「実務の前提」へ
スカウト採用は、採用難度の高い職種を獲得するうえで極めて有効な手法である一方、各プロセスに膨大な工数がかかり、属人性も高い構造的な課題を抱えています。
こうしたスカウト業務の現場に生成AIを段階的に導入することで、候補者ピックアップからスカウト文作成、媒体選定、分析・改善に至るまで、各工程の生産性とアウトプット品質を大きく引き上げてきました。
重要なのは、「AIに置き換える」のではなく、「人とAIそれぞれの得意領域に役割を分担する」ことです。検索条件の設計やピボットによる数値集計は人間が担い、その結果に対する解釈や改善のヒント出しをAIがサポートする。こうした実践的で現実的な活用の積み重ねが、AIを“使いこなす”ことにつながります。
もはや、AI活用は先進的な取り組みではなく、「成果の出るスカウト採用を支えるための前提」であると考えています。